英語のリスニングでおさえておくべき重要なポイントとして「音声変化」というものがあります。
ネイティブスピーカーが英語を話す際は、実はアルファベット通り話している訳ではなく、自然と少し音声を変化させて話しています。
ですので、テキストどおり聞こえないという感覚は実は正しいのです。
音声変化には「連結」「脱落」「同化」「短縮」「弱形」「変形」の6つがあります。
これらをおさえておく事は、リスニング力を向上するのに非常に役立ちます。
全ておさえるのは大変そうにも思えますが、音声変化には一定の法則があります。
一回ざっと学んで慣れてしまうと良いです。
今回の記事では6つの音声変化とその代表例を音声とイラスト付きで解説します。
目次
連結(リンキング・リエゾン)
まず1つ目は【連結】です。
keep in touch(キープインタッチではなく、キーピンタッチ)のように、連結は「"単語の最後の音の子音"と、"単語の最初の母音"が繋がって発音される現象」の事です。
リンキングやリエゾンと呼ばれたりもします。
実際に音声を聞いてみましょう。
keep in touchのpと、inのiが連結し「キーピン」のように聞こえる事がわかると思います。
テキスト:Do you still keep in touch with him?
英語の会話では、この連結現象がいたるところで発生します。
こういう現象が発生するという事を理解しつつ、リスニングする事が大切です。
ちなみに、自分が話す時も連結を意識しながら話すと、より英語らしくなります。
- join us(ジョインアスではなく、ジョイナス)
- in an hour(インアンアワーではなく、イナナワー)
- fill out(フィルアウトではなく、フィラウト)
- pick it up(ピックイットアップではなく、ピキタプ)
上記は連結の例です。おさえておきましょう。
脱落(リダクション)
2つ目は「脱落」です。
脱落は、take care(テイクケアーではなく、テイ・ケアー)のように「子音が重なる場合、同じ音は繰り返されず、前の子音が1つ脱落して発音される現象」の事です。
「リダクション」と呼ばれる事もあります。
今回の例の場合は「takeの最後のk」の発音と「careの最初のk」の発音が重なるため、前の子音のkが脱落し「テイ・ケアー」と発音されます。
テキスト:I have to go buy some milk. Can you take care of Cathy?
聞いてみましょう。
「テイ・ケアー」のように発音されている事がわかると思います。
これが「脱落(リダクション)」です。
例えば「just now」。
「tとnでtが脱落し"ジャストナウ"ではなく"ジャス・ナウ"」になります。
- hot dog(ホットドッグではなく、ホッ・ドッ)
- look good(ルックグッドではなく、ルッ・グッ)
- top batter(トップバッターではなく、トッ・バラー)
- just now(ジャストナウではなく、ジャス・ナウ)
上記はその他の脱落の一例です。
参考にしてください。
同化
3つ目は「同化」です。
同化は「2つの単語がくっつく事で、違う音に変化してしまう現象」の事です。
「want to → wanna」や「going to → gonna」と変化する例は非常に有名ですが、知らないと全く意味がわからないでしょう。
テキスト:And today, I'm gonna bring you to my favorite spots to eat. Let's go.
上記のYoutube動画を再生して、実際にgonnaを聞いてみましょう。
ちなみに、手加減なしのスピードで、同化以外の音声変化もおきていますね。
わかりやすいもので言うと「Can I(キャンアイではなく、キャナイ)」「Would you(ウッドユーではなく、ウッヂュー)」のようなものがあります。
この辺りは中学でも習うので理解しやすいでしょう。
テキスト:Can I keep it on silent mode?
「Can I」はキャナイになっている事がわかるでしょう。
また「keep it on」は連結がおきていますね。
- miss you(ミスユーではなく、ミシュー)
- glad you(グラッドユーではなく、グラヂュ)
- help you(ヘルプユーではなく、ヘルピュー)
- for your(フォーユアではなく、フォーリュァー)
上記はその他の同化の一例です。参考にしてください。
短縮
4つ目は「短縮」です。
「I am → I'm」「You are → You're」「You have → You've」というような短縮系の事をさします。
中学でも習いますし、比較的理解は容易です。
テキスト:We've run out of our leaflets, haven't we?
短縮は中学校でも習いますし、他の音声変化と比べると分かりやすいと思います。
- I will → I'll
- will not → won't
- should not → shouldn't
- How are you → How're you
上記はその他の同化の一例です。
参考にしてください。
弱形
5つ目は「弱形」です。
意味的に重要でない英単語は「弱く、速く、あいまいに発音される現象」の事をいいます。
「aやtheなどの冠詞」「ofやatなどの前置詞」「andやbutなどの接続詞」「himやherなどの代名詞」は弱く読まれる傾向にあります。
テキスト:Users can search through a wealth of information gathered from publicly available sources.
VOAのニュース英語なので、全体的にかなりゆっくりと発話されているのですが、aとofだけ弱く読まれている事が感じられると思います。
スピーディーな会話だと、こういう単語はさらに「弱く、速く、あいまいに」発音される事になります。
- let him(レットヒムではなく、レティム)
- know him(ノウヒムではなく、ノウイム)
- 冠詞(aやthe)、前置詞(ofやatやin)、接続詞(andやbut)、代名詞は弱く読まれる
上記はその他の弱形の一例です。参考にしてください。
変形(フラッピング)
最後の6つ目は「変形」です。
「better(ベッターではなく、ベラー)」のように「母音に挟まれたtの音がやわらかくなり、日本語で言う「ラ行」の音になる現象」の事を言います。
フラップTとも呼ばれます。
特に、アメリカ英語でよくみられます。
テキスト:I'm dying of thirst. Do you have some water?
water(ウォーターではなく、ワラー)に近い感じで聞こえます。
テキスト:I took apart my watch yesterday, but I can't put it back together.
2語続く場合も、同じような音声変化がおきます。
put itのputのtは母音に挟まれるので「プットイット」ではなく「プリッ」のように聞こえます。
ちなみに、put it backのitのtは、backのbの子音と重なるので脱落していますね。
- bottle(ボトルではなく、ボロゥ)
- little(リトルではなく、リロゥ)
- water(ウォーターではなく、ワラー)
- get over(ゲットオーバーではなく、ゲローヴァー)
音声変化まとめ
6つの音声変化を紹介しました。
- 連結:子音と母音が繋がって発音される。keep in touch(キープインタッチではなく、キーピンタッチ)
- 脱落:子音が重なると音が脱落する。look good(ルックグッドではなく、ルッ・グッ)
- 同化:2つの単語がくっつき、他の音に変化。going to → gonna。Can I → キャナイ。
- 短縮:「I am → I'm」「You are → You're」などの短縮系。
- 弱形:意味的に重要でない英単語は「弱く、速く、あいまいに」発音。「aやtheなどの冠詞」「ofやatなどの前置詞」など。
- 変形:母音に挟まれたtの音がラ行の音に。water(ウォーターではなく、ワラー)
最後に総まとめとして、下記の文章の音声変化をみてみましょう。
テキスト:I took apart my watch yesterday, but I can't put it back together.
色々と音声変化を起こしていますね。
- took apartは「トゥッカパート」
- watch yesterdayは「ウォッチィェスタデー」
- but Iは「バライ」
- can't putは「tとp」が重なりtが聞こえない
- put it backは「プリッ・バッ」に。itとbackの「tとb」が重なり、tが聞こえない
- back togetherの「backのkとtogetherのt」が重なり、「バッ・トゥギャザー」
このように、実際には1つの文章の中でもたくさんの音声変化がおきます。
徐々にですが、慣れていきましょう。
この6つの音声変化があることを理解しておくことは、リスニング力向上にとても役立ちます。
暗記する必要はありません。
日々のリスニング学習の中で「あ、ここはこんな風に繋がっているな」と気づく事ができれば良いです。
少しずつ、自分の中の音声変化データベースを作り上げていきましょう。
たくさん練習を積めば、必ずリスニング力はアップします。
音声変化をマスターする為の方法と教材は?
1つめ:リスニング無料学習館を利用する
1つめは私の運営するサイト英語リスニング無料学習館を利用するという方法です。
1文ずつ細かく区切られたコンテンツを何回も何回もディクテーションする事で、音声変化を深く学べると思います。
メリット
- 完全無料である
- 1文ずつ細かく区切られている。ループ再生機能もある
デメリット
- 【脱落】【連結】などのカテゴリではまとめられていない
- 問題数の多い短い英会話編のカテゴリ等は、ややゆっくり目なので、音声変化は少な目
- 解説もついているが、文法解説や単語解説のみの場合も多く、音声変化を中心とした解説では無い
英語リスニング無料学習館を使うメリットとデメリットは上記の通りです。
2つめ:英語リスニングのお医者さん(CD付き書籍)を利用する
英語の音声変化を勉強できるおすすめ書籍として「英語リスニングのお医者さん」というものがあります。
これを使うのも良いでしょう。
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英語リスニングのお医者さんの評価
メリット
- 書籍なので体系的に学べる
- 書籍なので、パラパラめくって見返すことができる
- 1回購入すれば永久に使える
デメリット
- 音源が短く区切られていない。ディクテーションのような能動的なトレーニングがしにくい
- 基本的な音声変化の説明は当記事で理解していると思うので、内容が重複する
- 音源がCDなので扱いが面倒
- 本なので場所をとる
「英語リスニングのお医者さん」を使うメリットとデメリットは上記の通りです。
3つめ:音声変化ディクテーションを1ヶ月行う
今自分が一番良いかなと思っているのは、リクルートの提供するスタディサプリENGLISHの中にある「音声変化ディクテーション」を1ヶ月行うという方法です。
「音声変化が起きている短文のディクテーション問題」を解きながら学ぶという能動的なスタイルなので、より深く音声変化を理解できます。
詳しくは、下記のエントリーに書いたのでぜひご覧ください。
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英語の音声変化【リンキング・リエゾン等】を習得するアプリ(教材)と具体的方法
メリット
- 短文のディクテーションで、能動的に音声変化を学べる。深く理解できる
- 「連結」「脱落」「同化」「短縮」「弱形」「変形」の6つのカテゴリ別に学べる
- 1問ごとに音声変化に特化した解説あり
- アプリもあるので、どこでも学習可能
- 1ヶ月で十分なので、書籍より費用も安くなる
- 1週間集中パターンなら無料である
デメリット
- 月額で費用がかかるので、ダラダラやる人には向かない
- スマホ or PCが扱えないと使えない
- 買い切りで永久的に使える訳ではない
「音声変化ディクテーション」を使うメリットとデメリットは上記の通りです。